アメリカの金融危機に素早く対応したインド企業
このところインドの経済成長が目覚しい。2006年から7年にかけてのGDPの成長率は8.5%を記録した。国家開発委員会が策定した第11次5ヵ年計画(2007年〜11年)では、この期間の経済成長率目標を9%とし、最終年度には10%の高成長を目指すという。
アメリカ最大のメディアグループであるタイム・ワーナーのアジア向け販売実績(2008年第一四半期)を見ると、何とインドが日本を抜き、アジアNO.1となった。北京五輪を控えた中国より、インドの方が世界からメディアマネーを呼び込んでいるのである。
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インドの潜在成長力は高い。特にインフラ関連の投資意欲には他のBRICs諸国を圧倒する勢いがある。
道路、港湾、空港、電力など基本インフラへの投資金額は年々倍増している。世界各国の投資ファンドが熱い関心を寄せるのもうなずけよう。ゴールドマン・サックスの予測では、「インドは2050年までにアメリカを抜き、中国に次ぐ世界第2の経済大国に躍り出る」とのこと。
そのためか、最近は安定的な資金運用を信条とする海外の政府系ファンド(SWF)によるインドのインフラ投資が急増しはじめた。負けてはならじと、インド政府も独自のインフラ整備ファンドを海外企業と共同で立ち上げ、今後5年間で4500億ドルの資金投入を計画しているほどだ。
ウォールストリートの金融機関のアウトソーシング先として潤ってきた感のあるインドのIT業界はアメリカ発のサブプライムローン危機の影響で大きな打撃を受けたとの見方もあった。確かに、アメリカの金融機関からはコスト削減の要求が高まったことや、インド国内の賃金上昇や通貨ルピーがアメリカドルに対し過去1年で11%も切り上げられた結果、インドの国際競争力は厳しい局面を迎えている。
ところが、多くのインド人経営者はこの難局を巧みに乗り越えつつあるようだ。というのも、インド企業はアメリカの金融危機の先行きを早い段階で察知し、必要な対策を講じていたのである。アメリカの金融システムを裏側で支える多数のインド人エンジニアからの情報を常に吟味していたからに違いない。そこで、インド企業は顧客のグローバル化に拍車をかけたのである。要は、“ウォールストリート離れ”を成し遂げたわけだ。その結果、ソフトウェア会社の2008年の収益見通しは20%高といわれる。 FX
もちろん、アメリカのITエンジニアに比べ、インド人技能者の給与は、いまだ6分の1程度に過ぎない。この安価な人材の供給源としての魅力は大きく、経営環境が厳しさを増すウォールストリートの金融機関とえいども、生き残るためには結局、インド人エンジニアに頼らざるを得ないのである。
世界的にも珍しい32歳の取締役の誕生
インドが比較優位を保っているのはIT部門に限らない。
今や世界最大の鉄鋼メーカーにのし上がったアルセロー・ミッタル。6大陸に27の製鉄所を稼動させる。従業員31万人、2007年の売り上げ1050億ドル。創業社長のラクシュミ・ミッタル氏は資産450億ドルを誇る世界の大富豪である。後継者として期待される息子のアディチャ・ミッタル氏は32歳。世界的大企業の中では最年少の取締役といえよう。現在、金融担当最高責任者として海外市場の開拓や企業買収に辣腕ぶりを発揮している。
そのアディチャ氏曰く、
「アメリカで何が起ころうと、世界の他の地域に目を向ければ成長する可能性がいくらでも見つかる。これから近代化の過程に入ろうとする人口が世界には20億人もいるんですよ。かつて、こんな大きな人口が一度に工業化社会に突入することはなかった。アメリカ発の金融危機など一時的な激震に過ぎません。世界はもっと広いので、新たな市場に目を注ぐ時だと思いますね」。
若いが、落ち着いた冷静な判断力には感心させられる。
タタ・グループの一翼を担うのは…
他にも、インドを代表する財閥系のタタ・グループも元気だ。インドではこの数年海外の投資家を招いて大規模な投資セミナーが相次いで開催されている。そのような投資家向けサービスの最前線で活躍しているのもタタ・グループの一翼を担うタタ・アセット・マネージメントである。インドは今や欧米のヘッジファンドに対して、バックオフィス機能を提供することで新たな顧客を獲得することに成功した。具体的には、会計事務や報告書の作成、リスクマネジメントなどが主たる業務となっている。
もちろん、インド市場に参入する外国のヘッジファンドの数は急増しており、アメリカのブラックストーンも「インド・ファンド」や「アジア・タイガーズ・ファンド」などを通じて、この新興市場への参入に余念がない。急成長を遂げるインド市場へ世界のヘッジファンドが注目するようになり、その仲介役としてタタ・グループも躍進を続けている。
しかも傘下のタタ自動車は2008年3月、英国の老舗自動車ブランド「ジャガー」と「ランドローバー」を買収。さらには、フランスのルノーからスピンアウトした空気自動車メーカーのMDIへの資本参加を決め、環境に強く、低価格の車をアメリカ市場に投入する計画を発表した。すでに同社はアメリカ市場で米国預託証券を上場しており、活発な資金調達を行っている。
タタ自動車は2008年夏にも日本で上場
その勢いは日本にも及びつつある。タタ自動車は東京証券取引所に2008年夏を目標に上場しようとしているからだ。
激しい指名獲得レースの水面下でFX
アメリカの大統領選挙戦は民主党のバラク・オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員の激しい指名獲得レースを軸に熱い戦いが続いている。早々と党の指名を確実にした共和党のジョン・マケイン上院議員と比べ、民主党の両候補は6月まで続く予備選挙で体力と資金を消耗しつつある。
決着がつくかと注目を集めたペンシルベニア州の予備選挙でクリントン候補が競り勝った。そのため、息を吹き返した感のあるクリントン候補は 「潮目が変わった。自分は8月の党大会まで決してあきらめない」 と発言。
ところが、5月6日に行われた予備選挙ではオバマ候補がノースカロライナ州で大勝し、クリントン候補が圧倒的に優位と見なされていたインディアナ州でも互角の戦いが演じられた。その結果、代議員の獲得総数ではオバマ候補が1840票、クリントン候補が1684票となった。
オバマ候補のリードが続いているが、いずれの候補も指名獲得に必要な2025票には達していない。残り8州の予備選挙を経て、8月の党大会になるが予断を許さない状況だ。
接戦が続けば、いずれの候補者も指名に必要な代議員数を獲得できないという異例の事態も起こりうる。
その場合には、特別代議員と呼ばれる現職の上下両院議員や州知事、大統領経験者など、党内の大物政治家たちの投票で最終的な決定が行われることになる。これほど指名争いで激しいレースが繰り広げられたことは過去に例がない。このすさまじい指名獲得競争を自分たちの業界に有利に利用すべく水面下で動いているのが、ヘッジファンド業界である。
大統領選挙はファンドマネージャーの腕の見せどころ
アメリカでは大統領選挙のみならず、連邦議会選挙においても、投資ファンドや先物商品を扱う専門家たちが、あたかもギャンブルの胴元のごとく、どちらの候補がどの程度の差をつけて勝つかを占うビジネスを営むケースが多々ある。その背景には、金融や市場調査の専門家として、有権者の動向をどれだけ正しく読むことができるかどうかをアピールし、自分たちの未来予測の手法や技量を高く売る場にしようとする思惑が隠されている。
これまでの予測では、民主党の指名を勝ち取るのはオバマ上院議員で、その確率は70%近いと見られている。そして、11月の最終的な国民投票では共和党のマケイン候補を破り、黒人初の大統領が誕生する確率が6割程度といわれる。もちろん政治の世界は「一寸先は闇」。残された選挙期間内に予想せざる事態が発生し、これら金融界のプロを自負する投資家たちの目測が外れる場合も十分ありうる。
とはいえウォールストリートで日々マネーゲームにしのぎを削るヘッジファンド業界のマネージャーたちにとって、今回の大統領選挙はかつてない関心の高まりをみせており、政治献金の額でも、過去の記録を塗り替えつつある。
マケイン候補がヘッジファンドに人気の理由FX
実はヘッジファンドの世界で活躍するファンド・マネージャーたちにとっては、マケイン候補が大統領に選ばれることが最も望ましいシナリオだと受け止められている。
なぜなら、マケイン候補はブッシュ大統領が推し進めてきた富裕層に対する大型減税措置を恒久化しようとの考えを持っているからである。ヘッジファンドの顧客はほぼ例外なく富裕層だ。彼らの利益を代弁し、擁護してくれる可能性の高いマケイン大統領の誕生を期待するのは当然であろう。
しかし、一般の有権者にとっては、マケイン候補が代表する共和党こそ、現在の厳しい雇用環境や泥沼化したイラク戦争の元凶であり、アメリカの軌道修正と復活を図るためには、民主党による政権交代は欠かせないと受け止められている。
一方、クリントン候補の場合は、夫である元大統領が1990年代に、いわゆるITや不動産バブルを政策的にもたらし、アメリカ経済を活性化させたとの思いが強く、「夢よ、再び」とばかり、クリントン候補に期待する向きも少なくない。
しかもクリントン夫妻にはウォールストリートの金融界に友人や支持者が大変多い。その意味でもクリントン大統領が誕生すれば、ヘッジファンド業界にとって、不都合な規制の網をかぶせることはないだろう、との観測も広がっている。
逆に、オバマ候補の場合は、タックス・ヘイブンの濫用を防止する法案を強力に推し進めるなど、ヘッジファンドの顧客である富裕層にとって、敵対するような政策や姿勢を全面的に打ち出している。ヘッジファンド業界にとっては、もっとも望ましくない大統領候補といえるだろう。にもかかわらず、この業界では最終的にオバマ大統領が誕生する可能性が高いと分析し、同候補に対する政治献金を積極的に進めるファンド・マネージャーの数が多いのである。
オバマ候補が圧倒的に政治献金を集金
2008年4月に発表された「アルファ・マガジン」の調査によれば、アメリカのヘッジファンド・マネージャーのトップ10に名を連ねる、市場の先読みを得意とするエキスパートの間では、オバマ候補が圧倒的に多額の政治献金を集めているようだ。
4月半ばの段階でクリントン候補が860万ドルのキャッシュを手にしていたが、オバマ候補は4250万ドルものキャッシュを自由に使える立場にあった。2月のスーパー・チューデーの前までは、クリントン候補が資金面ではオバマ候補をはるかに上回っていた。ところが選挙戦が進むにつれ逆転現象が起き、現時点ではオバマ候補がクリントン候補を圧倒するほどの潤沢な資金を得ている。 FX
その背景には、インターネットを通じて小口の募金を広く集めることに成功したオバマ陣営の巧みな戦略がある。ネットオークションやソーシャル・ネットワーキングの世界で実績を上げた専門家をヘッドハンティングし、ネットを通じての選挙キャンペーンと募金活動に新基軸を打ち立てたわけだ。
そのような動きに注目したヘッジファンドのマネージャー達は、最終的にホワイトハウスの主になるに違いないと判断し、オバマ候補に対する献金を加速させている。利にさといヘッジファンドの動きがオバマ陣営にとっては資金調達面での大きな追い風となっているようだ。資金面で追い抜かれたクリントン陣営では銀行から多額の借金を重ねなければ、選挙戦を継続できなところにまで追い込まれた。
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